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概要

月刊ぷらざ6月号

PLAZA SPECIALF e a t u r e特 集 そう語るのは岐阜市薮田にある「すし さかい」の大将、阪井裕治さん。江戸時代はおにぎりくらいの大きさだったという握り寿司も、今ではほとんどが一口で食べられるサイズ。できたてをすぐ口に入れる“せっかちさ”も和食文化の“粋”なのかもしれません。人一倍お酢に気を配る阪井さんですが、その理由は「寿司の美味さは8割がシャリで決まる」いう考えに基づくもの。ちなみに江戸時代の酢飯の主流は「赤酢」で、これは別名「粕酢」とも呼ばれる酒粕を長期熟成させたお酢。江戸前寿司には欠かせない存在でした。「うちでも赤酢を使っていますが濃い飴色なので、ごはんがほんのり色づきます。白いお米、いわゆる銀シャリがもてはやされるようになってからはあまり見られなくなりましたが、赤酢の持つコクは魚介の旨味を引き出してくれるんですよ」 実際に味見させていただくとツンとしたすっぱさがなく、驚くほどまろやか。阪井さんはこの赤酢と米酢をブレンドして使っており、塩味を感じにくい夏は赤酢の配合を多くするなど、気候によっても使い分けています。 シャリ作りは一瞬一瞬が職人技。三升炊きのごはんを熱いうちに木桶にあけたらお酢をかけ、目にもとまらぬ速さで切るように混ぜていきます。この時点ではお酢はまだごはんに馴染みきっておらず、シャリの酸味は少し尖った印象。しばらくおくとこれが沈殿するので天地を返し、再び混ぜていきます。こうすることでお酢とごはんが木桶の中で一体化して、酸味と甘味が調和した酢飯ができあがるのです。 阪井さんにお寿司の魅力をうかがってみると、「和食全体に言えることですが、素材の持つ淡い味わいの中から“旨味”を引き出す料理であること。例えるなら、ひと手間かけて綺麗な人をより美しく装い引き立たせる…そんな感じでしょうか(笑)」 そういう観点から見ても、和食にお酢の存在は欠かせないものだといいます。「酢の優れた殺菌効果があるからこそ、日本では濃い味つけや調理に頼らない“素材を活かした料理”が育まれてきたのだと思います。酢で消毒すれば必要以上に手をかけなくても安心して食べられますから」 そんなお話を聞きながらいただいたお寿司は、口に運ぶとはらりとごはんがほどけ、噛みしめると素材そのものの旨味がいっぱいに広がります。「穀物の旨味と魚介の旨味の相乗効果によって1×1が5にも10にもなるのがお寿司の醍醐味。この一体感をいかに引き出せるかが腕の見せ所なんです」 お寿司は日本の風土が育んだお酢と寿司職人さん達の感性の賜物。小さな一貫には、いなせでいぶし銀な食文化が凝縮しているのです。すし さかい■場  所/岐阜市薮田南4-14-14■営業時間/11:30?13:30、17:30?21:30LO■定 休 日/不定休■問 合 せ/058-215-7553(予約がオススメ)酢が育む“素材を味わう料理”とは?握るのも驚くべき早業。「握りも巻物も、握るというより空気を入れて包んであげるという感覚なんですよ」と、阪井さん。使用している米酢(左)と赤酢(右)。お酢習慣さわやかネタには極力ふれず…職人技!本手返し五手空気を巻き込むように11