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概要

月刊ぷらざ6月号

 本作は1998年に亡くなった黒澤明脚本の遺稿で、スタッフには“黒澤組”が集結。1つの時代の象徴として、このメンバーで20世紀中に撮りたいという想いがあったのかもしれませんね。 だから作品には随所に“黒澤イズム”が息づいています。例えば宿屋のシーンの作りこみは流石の一言で、外で降る雨がにおい立つような、じめっとした空気感まで表現されているんです。 一方キャストに注目してみると、寺尾聰さんは嘘をつけない優しすぎる武士の役が非常にしっくりきていて、やっぱり上手いですね。今やすっかりクイズの女王ですが、若かりし頃の宮崎美子さん演じる、控えめだけど芯の強い奥さんともお似合いです。さらにこの映画で注目したいのが、殿様役の三船史郎さん。なかなか見る機会は少ない俳優さんですが、彼は黒澤映画に欠かせない名優・三船敏郎さんの長男なんです。タッパがある上、表情とかセリフ回しに三船さんの血筋が感じられて、無茶な殿様役が良い存在感を醸していますよ。 でもやはり黒澤イズムをより色濃く感じられるのは、殺陣シーンでしょうか。半身を反らして剣撃をよける…みたいな必要以上に無駄な動きのない殺陣は、黒澤映画のキホン。それが本当の意味でリアルなチャンバラを生み出しています。 エンディングの爽快な後味もこの映画の良さ。タイトル通り梅雨の晴れ間に見るのがよく似合う佳作です。をつきつめたのが、この映画です。「シェイプ・オブ・ウォーター」は日本語にすると「水の形」。本来水は形を持たない存在ですが、だからこそどんな形にも変化する。そしてそれは愛も同じ。根底には監督のそんな愛への考え方があります。 登場人物は半魚人や声の出ない女性、ゲイ、ラテン系黒人と、大半は社会的弱者やマイノリティ。それに敵対する関係として、強さを全てと信じるアメリカ人が描かれています。そんな設定も興味深いですが、私が何より面白いと思ったのが半魚人の色っぽさ。ヒロインにふれるしぐさやキスするシーンが紳士的で、どこか官能的なんです。彼女が異性として彼を好きになる気持ちに説得力がありました。半魚人をCGではなく人が演じているという“生々しさ”と、そして恋愛要素としての“容姿の美しさ”を排除した2人の関係も、大人の恋愛を際立たせているのではないでしょうか。 それに対し、水の中で抱き合うシーンの幻想的な雰囲気も秀逸。実はこの場面、スモークに照明を当てて水の中を表現しているそうですが、これは舞台演劇でもよく使う手法。おそらく幻想的な美しさを強調するための表現ですが、その理由についても、つい深読みしたくなるシーンでした。さらに注目なのがヒロインの“目の演技”。言葉がないことが、全く苦にならないんです。私も一人の役者として、こういう表現ができるんだなぁと、とっても勉強になりました。皆さんもぜひご注目ください。 サム・ライミはもともとホラー映画畑の人物ですが、スパイダーマンが好き過ぎて映画化を熱望。でも当時の彼はホラー映画の監督だし…ということで、大作映画の監督はなかなか認められませんでした。そこで彼はシリアス、ヒューマンなど、今までだったら作らないであろうジャンルの映画を作り、何でも撮れることを証明し、制作会社からスパイダーマンの監督になることを認めさせたんです。さらにいじめられっ子の主人公・ピーターはこの人だ!と、主演をまだ知名度の低かったトビー・マグワイアで押し切りました。 実は初めてトビーの顔を見たときに、僕は思わず目頭が熱くなりました。彼の顔がサム・ライミにそっくり!この作品で彼は自分を主人公に投影しているんだと、そして誰よりもスパイダーマンになりたかったんだと気付いたんです。 雨の場面で印象的なのは、どしゃぶりの中でのキスシーン。ピーターはスパイダーマンの姿でヒロインで幼なじみのMJとキスするんですが、彼女は命を救ってくれたのがピーターであることを知らないんですよね。ヒーローと若者の狭間で揺れる、複雑な心境…。「大いなる力には、大いなる責任が伴う」??サム・ライミが伝えたかったのはそこなのかなー、と思っています。55